思考に偏ると真実は遠ざかる

タロット-生命の物語

思考に偏ると真実は遠ざかる

人は誰でも、人生のどこかで、ひとり静かに 真実を追い求める時期があるかと思います。

夢を見失った時、人生に疲れた時、何かの挫折を味わった時…
真実とは何なのか、思考的で、知的な探究心を起こします。

昔は、人里離れた山奥に籠ったり、世界中を旅しながら、「人生とは何か?」と考え抜いていた人も 多かったのではないでしょうか。

今は時代が違います。物理的に自ら孤独な環境に身を置く人は稀でしょう。
むしろ普通の日常で、心だけ孤独の世界に閉じこもり、
ひとりで真実を探究するようなシーンが浮かびます。

現実的なものごとが順調に動き、明確な目標を持って前向きに行動しているような時は、
ゆっくり考える時間をつくることすら難しいはず。

やはり、何かに躓き、大きな軌道修正を余儀なくされた時、
「自分は何が間違えていたのだろう」と内省から始まる場合が多いのかもしれません。

そして内省が進んでいくうちに、哲学的な探究に入るケースもありそうです。

目には見えない 何かの答えを求めて思考する…
先人達の書を読み、思考を重ねる…
この繰り返しにより、一歩一歩、確実に 真実に近づいていくかのように見えます。

しかし、思考は人間の意識の領域を出ることはありません。
思考をし、内省を進めることは、何か新しい気付きは生まれるまでも、
決して答えに辿り着くことはできないのです。

内省を進めると、気持ちは落ち着いていくかもしれません。
しかし思考だけでは、何かの問題や状況が変わるわけでもありません。

無意識の中にある、自分でも気が付かない感情は、
孤独や悲しみを感じているかもしれません。耐え難い苦しみにうごめいているかもしれません。

それを理論や理屈、理想論などでコントロールしようとすればするほど、
「意識の私」は落ち着いてきても、「無意識の私」は そうではありません。

意識の私は、一歩一歩、真実に近づいてきているつもりでも、
無意識の私は、真実から遠ざかっていることを わかっているのでしょう。

こうした状況があまりにも続きすぎると、多くの場合、心が分裂していきます。

意識の私は、豊富な知識により、「真実に近づいた」と自覚しています。
自分は他者より優れているのだと、「慢」の心が強くなります。

でも無意識の私は、真実から離れている自分をも感じているのです。
このすれ違いが、意識の私には、意味のわからぬ、原因もわからぬ 焦りや不安、そして劣等感となって、自覚できる心の領域の 底に現れてきます。

だから、まるで「自分の意見が絶対に正しいんだ」 と言わんばかりに、
他者をコントロールするようになる傾向に陥ります。

時には、他者から尊敬を集めるかのように、聖人のような振る舞いを見せることもあるでしょう。
時には、違う意見を聞いたとき、頭から否定するように、怒りを現すこともあるでしょう。

そして「真実は何なのか」と、答えを求める心よりも、
「自分の考えこそが正しいんだ」 ということへの執着が 強まります。

心の中では、「自分が他者よりも勝りたい」という 修羅の炎に 巻かれていくのだと思います。

思考だけの知的探究では、真実に近づけば近づくほど、
真実は遠ざかっていくのです。

もちろん、人生のある期間において、
孤独の世界で、自分だけの世界の中で、熟考をし、内省する時期は大切かと思います。
でもそれを続けてしまったら、求めている答えから外れてしまうことも知るべきです。

真実の答えは、どこか離れた場所にあるわけではありません。

自身も悩みに包まれ、未熟な姿のままで、
悩んでいる人々の中に飛び込み、
困っている人を助けながら、共に成長をしていくような、

ごく当たり前の、ごく普通の、「現実」という名の日常の中に、
真実に辿り着ける道があるのだと思います。

深く内省する時期を経て、
勇気を持って、現実の課題に目を向け始めたその時にこそ、
内省していた時期の 知識や体験が、目の前の道を切り拓く鍵となり、
同時に、人生の基盤となるような宝ものに 変わっていくに違いありません。

THE HERMIT.【隠者】

タロットの隠者は、自分の世界に閉じこもり、内省をするカードです。

正位置の場合は、思考で真実を求めていたり、孤独に内省をしている状況を示し、こういう時期も必要と前向きに捉えられますが、
逆位置で出た場合は、思考に偏り過ぎて、真実から遠ざかっているとの、よくない状況への警告として受け取るとよいでしょう。

周りに人がいる環境には変わりがなくても、精神的な孤独に陥っている状況 も暗示するので、やはり自分の状態を客観的に見直すことが大切です。

隠者からは明るさやエネルギーを感じることができません。
思考の世界にだけ入り込み、自分にだけ目が向いていくと、生命のエネルギー自体は 落ちていくことを現しているような気がします。

人間はひとりで生きるものではなく、他者と触れ合うことで、エネルギーを高め合っていくことが大切なのでしょうね。
真実の答えは、この先にあるのだと思います。